2025/01/30
現実と幻想、過去と現在が交錯した世界をモノクロ・サイレントの表現主義的技法と80年代的グロテスクを混交させて描かれる初期のガイ・マディン作品がまさかの4Kリストアされて劇場公開される。長編デビュー作『ギムリ・ホスピタル』は デビッド・リンチ『イレイザー・ヘッド』(1976) や アレハンドロ・ホドロフスキー『エル・トポ』(1969) を全米配給したベン・バーレンホルツの目に留まり「全くとんでもない、エキサイティングな作品。限られた観客層が強力な反応を示す類の映画だ」とニューヨークで公開され、長期間にわたってカルト的な人気を獲得している。日本では1992年に公開後、東京フィルメックスで特別上映されたのみで非DVD/Blu-ray化の状態であり,アリ・アスターがガイ・マディンの最新作をプロデュース(※1)したこともあり、再上映の期待が高まっていました。(※2)
2作品は3月15日(土)より、シアター・イメージフォーラム(渋谷)にて先行公開後、順次全国公開を予定。イメージフォーラムでは前売り特典として4K版海外ビジュアルのポストカードが提供される。
なお、2作品はリスキットのダーク・ファンタジー作品を集積した新ブランド【Riskit Black Label】の第1回配給作品としてクレジットされている。
※1 人気監督/プロデューサーに成長したアリ・アスターは、自らガイ・マディンに連絡を入れて彼の最新作『Rumours』(2024 主演:ケイト・ブランシェット)の製作総指揮を買って出たという。
※2 今年前半にアリ・アスターが製作総指揮を務めた作品の日本公開が数作品予定されている。
クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャ監督 『ハイパーボリア人』(2月)
デヴィッド・ゼルナー&ネイサン・ゼルナー監督 『サスカッチ・サンセット』(5月)
1958年 カナダのウィニペグ生まれ。大学卒業後俳優業を経て1985年に初監督作となる短編 ”The Dead Father” を発表、トロントをはじめとする各国映画祭で話題となる。生まれ育ったウィニペグを拠点に創作活動を続け、見るたびに違う内容・結末になる映画や、別な作品の映像でヒッチコック作品を再現するなど斬新なインスタレーション作品も含めカナダで最も国際的評価を得ている監督である。最新作はアリ・アスターが製作総指揮した『Rumours』(2024)
長編第一作。ガイ・マディンは監督・脚本・撮影・編集を兼任している。撮影直前に①恐怖②嫉妬③憎しみ ④後悔⑤悲しみ⑥忘却⑦あこがれ⑧恥辱⑨復讐⑩愛という10種類の感情の番号を演者に指示するのみという演出手法で撮影されたという。物語は19世紀末のカナダの寒村にある不気味な病院を舞台に、天然痘を患った漁師のエイナーと看護婦たちに人気の患者グンナーとの不思議な因縁を描く。 ガイ・マディンは医者役で出演している。
監督・脚本・撮影・編集 : ガイ・マディン
出演 : カイル・マクローチ、マイケル・ゴッリ、アンジェラ・ヘック
1988年/カナダ/英語・アイスランド語/ モノクロ/スタンダード/1時間12分/DCP 4K
長編第二作。題名は舞台となるアルハンゲリスクの英語名で「大天使」の意。第一次世界大戦 終盤のアークエンジェルを舞台に、ロシア人兵士を中心に展開する “倒錯する愛” の物語。スタッフ・キャストは「ギムリ・ホスピタル」とほぼ同じで、ガイ・マディンも監督・脚本・撮影・編集・美術(共同)を兼任している。ガイ・マディンは眼帯姿の兵士役で出演もしている。
監督・脚本・撮影・編集 : ガイ・マディン
出演 : カイル・マクローチ、マイケル・ゴッリ、 サラ・ネヴィル
1990年/カナタ/英語/モノクロ/ スタンダード/1時間18分/DCP 4K
決して万人には勧められない! でも、はまる人ははまる! トラウマ必至の疑似無声映画
さぁ、尻込むのはやめて、映画館へ行こう!!
3月15日(土)より シアター・イメージフォーラムにて2作品同時先行公開
※ 2本立てではありません
提供:Riskit(Black Label) / caruta
配給:Riskit
宣伝協力:プリマステラ
公式 HP: guymaddin.jp
リスキットは日本では『ロングウェイ・ノース』『マロナの幻想的な物語』など良質な海外アニメーション配給会社ですが、同社プロデユーサーは34年前に本ガイ・マディン2作品を配給した当人でもあり、本作の配給を契機に新たに新レーベル(Riskit Black Label)を立ち上げました。
Riskit Black Labelでは、GUY MADDIN2作品のほか、第1回新潟国際アニメーション映画祭にて境界賞受賞の『THEE WRECKERS 四つの悪夢』、アヌシー映画祭で上映されて話題となった横スクロール地獄絵巻『Swallow The Universe 宇宙を飲み込む蟻くそ』などアート色の強い超個性的なダーク・ファンタジー作品がラインナップされています。
監督:ROSTO(1992年没)
本作は彼の友人であり、オスカー受賞作品を手掛ける仏のアニメーション制作会社Auttour de minutを率いるニコラス・シュミアキンによってまとめられ、ROSTOのかつてのバンドであり、”Mind My Gap”でも重要なモチーフとなっているTheWreckersのドキュメンタリーとの組み合わせで2022年フランス他で公開、ROSTOの展覧会とともに大きな話題となった作品です。
監督:Nieto
脚本:Daichi Mori
満州の森の奥深くで迷子になった幼い子供の、壮大で血みどろの騒動の物語。彼の突然の出現により、それまで完璧に秩序だった動物たちの原始的な世界に無秩序が生まれる。横スクロール地獄絵図